煮玉子

楽の多い生涯を送っています

黒歴史

 人は誰しも黒歴史の1つや2つあるだろう。例えば中二病をわずっていい時期があったり、自分が遠い惑星で生まれた世間知らずの可愛い子ちゃんであると信じ込んだり...。ただ、その期間を経て恥ずかしくなって頭抱えて悶絶する期間を通り過ぎた今、自分自身を俯瞰的に見てみると、その経験があったからこそ今の自分の人格が形成されているとふと気づけるのではないだろうか。かくいう私自身も極度の中二病を患っていた時期があるあらこそ今の自分があると考えると、消してしまいたいあの頃の自分も少し好きになれている。しかし、今もなお思い出すのも躊躇われるあのころの記憶を、この場を懺悔室と思い込み少しだけ吐き出したいと思う。 

 

 中学一年生のころ、私は初めてパソコンを買ってもらった。もともと両親からヲタクの英才教育を受けていた私にとっては待ちに待ち焦がれた逸品である。スペックはそこそこのhp製のデスクトップ型パソコンでネトゲやネットサーフィンをするためには十分なものであった。私は当時流行っていたMMORPGを数個ダウンロードし、その中でも「ラグナロクオンライン」や「マビノギ」は特にやりこんだ。

 尚上記2つのゲーム内でも数多の黒歴史を生み出したのだが今回は割愛させていただく。というかあまり思い出したくない、ダメージがでかい。まぁとにかく私のパソコンライフは充実していた。あの事件までは滞り無く。

 

 先ほどヲタクの英才教育を受けていたと言ったが、それは間違いではなく私の

カテゴリ:「アニメ」、「ボーカロイド」etcに関する知識は周りの友達とは一線を画していた。友達が観ていたアニメは隅々まで網羅しているし造詣も深い、というか深いがあまり早口で喋る典型的「それ」になってしまい自然消滅していった友達が何人かいた。「どうせ今も早口なんでしょう?」...その通りである。万の知識を持つおばあちゃんによると中二病やヲタクは一生治らないとのこと。おばあちゃんが言うなら間違いないのである。

 

 ただ一つ私にはネットを扱うにおいて大事なものが欠如していた。ネットリテラシーである。幸いにも父が対ウイルスソフトをインストールしてくれていたためウイルスにかかることはなかった(同じサイトを友達のパソコンで開いたらがっつり感染してスタートアップするたびに変なアイコンが表示されてクソ重くなった。阿部君ごめん。)。しかし敵はウイルスだけではない。

 

 中学2年生といえば徐々に性の知識に興味がわいてくるお年頃であり、人と違うことに喜びを覚える中二病の僕もそこは素直だった。たまに、ごくたまにではあるがそういうサイトものぞくことがあった。ごくたまに。自室であるため気にする必要もない人目を気にしながらエッチなサイトを開く私。お気に入りのサイトで好きな同人誌を読み散らかして満足していた私であるが突然画面が切り替わる。どうやらいつの間にか有料サイトに登録していて会費の5万円を払えというのだ。

 

 まぁ所謂「ワンクリック詐欺」である。

 

 しかしそんなものを知るはずもない私、パニック、大パニック。そんな大金が払えるはずもなく熟考に熟考を重ねた私は。祖父に相談した。これだけでも大分くるものがあるのだが祖父に、よりにもよって祖父に相談してしまったことで事態はさらに悪化する。祖父は流行りものに疎く、況やネット文化なんて知る由もない人だった。ワンクリック詐欺を鵜呑みにして祖父に相談する私、私の言葉を鵜吞みにして困惑する祖父。永久機関の完成である。恥エネルギーが永遠に生み出されていく。そして私と同じく熟考を重ねた祖父は「5万円は大金であり、おいそれと出せるようなものではない」という至極もっともな意見の元、

 

 家族会議が開かれた。

 

 私の愚行をつまびらかに説明する祖父、千切れんばかりの腹を抱えて笑う祖父。地獄絵図の完成である。あの時、もしも父か母に相談していたら被害は最小限に抑えられた。というか私にもっとネットリテラシーが高ければこんな事態は起こらなかったのである。

 

 結果としてこの事態をきっかけに様々なことをきちんと調べるようになり、ネットリテラシーを人並み以上に身に着けられるようになったので最初に言った通りあの時の自分がいるおかげで今の私が存在してるのだが、それはそうと思い出したくはない。

 

 詐欺、特に「ワンクリック詐欺」で苦しむ人が少しでもいなくなればと願うばかりだ。